言葉を紡いで、十年。錆びつくことのない物語を、これからも。
PR

ヒューマンドラマ

ヒューマンドラマ

【短編小説】その切り込みは、優しさでできている

「こんなの作るために頑張ってきたわけじゃねーよ」 IoT家電の開発チームで最先端の未来を作っていたはずの翔太。しかし彼に下された辞令は、社内で「左遷先」と揶揄される『容器包装開発課』への異動だった。 そこで待っていたのは、ゴミのようなサンプ...
ヒューマンドラマ

【短編小説】潮濡れの煉瓦

梅雨明けを目前にした六月の終わりの夜だった。 その湿度は、空気そのものが粘性を帯びているかのように重く、耕作の皮膚にまとわりついて離れなかった。東京の乾燥したアパートで過ごした日々が彼の血液からすら水分を奪い去ったかのように感じていたが、こ...
ヒューマンドラマ

【短編小説】潮騒の残響と、沈黙の螺旋

佐伯さえきは、いつも午前六時半に目を覚ました。正確には、目覚まし時計の電子音によってではなく、古い木造アパートの壁を這う朝の冷気と、胃の奥から這い上がってくる鈍い疼きによって、半ば強制的に意識の淵から引き上げられるのだ。 今朝もまた、同じだ...
ヒューマンドラマ

【短編小説】夜と朝の狭間を走る箱舟

インクを零したような闇の中、駅のホームは青白く光る。冬の冷気が肌を刺し、吐く息だけが確かな白さで揺れた。 朝の四時半だというのに、ホームにはまばらな人が見て取れた。自動販売機の低い唸りがやたらと響く。二条のレールが鈍い光を反射し、やがて来る...