SF 【短編小説】麒麟は炎を越ゆ 天正十年、初夏。京の都は深い闇と、じめりとした熱気に包まれていた。湿度をたっぷり吸い込んだ空気は重く、肌にまとわりつく。土壁の向こうから聞こえる虫の合唱は、この時代の変わらぬBGMでありながら、今宵はどこか切迫した調子を帯びているように感じ... 2026.02.12 SF
SF 【短編小説】言葉のいらない世界へ 窓の外から、断続的にサイレンの音が響いていた。 分厚い遮光カーテンの隙間から、赤色灯の光が不規則に部屋の壁を撫でていく。この街の夜は、もう半年以上も安眠を許していない。 裕太ゆうたは狭いワンルームの玄関で、靴を脱ぐ音すら殺すようにして息を吐... 2025.09.14 SF
SF 【短編小説】時間の澱み、砂上の帝都 大正十一年。帝都の空気は、鉛のように重く、湿っていた。史実では「大正デモクラシー」の熱気が人々を突き動かしていたはずのこの時代、我々の世界では、それは許されていなかった。鉄血宰相と呼ばれた老侯爵による専制的な帝政復古が完成し、議会は機能不全... 2017.01.15 SF